
5.2波浪の浅海変形、構造物の反射の影響を取り入れた波浪予測モデル
5.2.1 計算モデル
計算モデルとしては港湾技術研究所による「砕波およぴ反射を考慮した波浪変形計算プログラム」を用いた。
一般的に、沖合いから進入してきた波は海底地形や周囲の構造物の影響を受け、屈折や浅水変形、砕波変形、さらには回折や反射によって波高や波向を大きく変化させる。港湾および海岸構造物の設計では、このような波浪変形を正確に推定することが重要である。また、実際の海の波は多方向不規則波であるため、波浪変形の計算に当たっては、海の波の多方向不規則性を考慮しておかなければならない。
波浪変形計算の基礎式としてはエネルギー平衡方程式を用い、砕波によって失われる単位時間当たりのエネルギー逸散量を成分波のエネルギーと波速に比例すると仮定している。また反射波については、岸方向に進む波と沖側に返る波に分け、岸側に反射される準の変形は、岸方向の波の波の変形計算の中で計算し、沖方向に反射される波の変形は、岸方向に向かう波浪変形計算が終わった後に、沖側に向けて再び変形計算を行って求めている。
1)エネルギー平衡方程式
海の波のような多方向不規則波に対して波浪変形を計算する方法として一般的に用いられているものにエネルギー平衡方程式法がある。この方法は、微小領域内に流出入するエネルギーフラックスの連続と、波の屈折による波向変化に伴うエネルギーフラックスの連続を仮定して求めた、次式のエネルギー平衡方程式を基本式としている。

Sは波の方向スペクトル、Cgは波の群速度、θはx軸の正方向から反時計回りに測った波向角である。
式(1)の左辺第1項と第2項は浅水変形による波高変化の項を示し、第3項が屈折による波高変化を示している。また式(1)は定常状態におけるエネルギー平衡方程式を示しており、エネルギーの損失はないと仮定している。
式(1)は1階微分の方程式であるため、沖側から波の進行方向に向けて解くことがで
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